『文庫版 No.6 #5』あさのあつこ
紫苑の身を案じる、母 火藍。
彼女の記憶が紡ぎ出すのは、理想郷NO.6の何不自由ない暮らしの中での、絶望の影。
火藍の言葉に表される、人を人として扱わないNO.6の実態を表すような出来事が、実際に住人たちが息づくそのすぐ側で行われているという事実。
そして皮肉にも、その場に居合わせ血なまぐさい現実を体感している紫苑。
しかし、彼は想像を絶する凄惨な事実に心がくじけそうになりながらも、目的のために歯を食いしばって歩く。
過酷な現実と向き合い、己自身と戦っている。
生きて、記憶して、伝える…
母と息子が、時と場所を違えて同じことを思う。
そんな姿を見ていると、胸が熱くなる…
そして折れそうになった紫苑の心を「おれには、あんたが必要なんだ」と鷲掴みにして引き上げる一方で、"ごめん"と謝る彼に「言葉を免罪符にするな、、もっと尊べ」と叱咤するネズミ。
言葉で紫苑を翻弄するネズミと、その言葉で一喜一憂する二人の関係に萌える…
だが終盤で一瞬垣間見せた紫苑の中にある何か…は、未だにわからないままだ。
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