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『ユーレイに関する小さな事件簿』滝井ルカ子

とても面白くて、すごくイイ話だった!
BLとしての王道からは少々外れてるけれど、物語としての面白さは格別(^^)

弓和平が同僚の葬式から帰ったら、そこに彼(春木要)のユーレイが…(^^;
というナンセンスな設定。
自分には彼の姿は見えるけど周囲には見えなくて、死んだ人間と会話しながら話が進んでいくのだけど…

このあとネタバレ含むので畳みます。





強引なユーレイに振りまわされる悲哀?と思ったけれど違ってた。

自分と死んだ春木は、実は学生時代に演劇を通して知り合いだったのだ。
今はスッパリとやめてしまったが、演出家と役者としてトコトンあわない二人だった。(弓はそう思っていた)
ところが死んだ春木との会話するうちに次々と昔の話を思い出し、自分の気持ちも引きずり出されてゆく。少し離れたところから当時の自分と春木を振り返ると、若いときは見えなかったものが色々と見えてくるのだった。
自分の演出をことごとく蹴散らして、やりたいように演じたあげく観客を釘付けにする魅力あふれた男 春木に嫉妬し、それでいて惹かれていた。
彼には敵わない。稽古ではキツい言葉の応酬ばかりだったが、心の底ではそう思っていた。
苦い思いと、それだけでない何かもやもやとした感情に弓はとまどう。

ところが、春木のほうはずっと弓のことが好きだったらしい(笑)
酒の勢いに任せて迫ったりもしていたようだが、なかなか気づいてもらえなかったようだ。

同じ職場にいても背中合わせで仕事していて、ろくに言葉も交わしていなかった二人。
今こうして向き合う時間が出来、自分が知らなかった生前の春木の姿がわかるにつれてむくむくとわき上がる思い。
同じものを見ても捉え方の違う相手の真意を知ったことによって生まれる感動と新たな欲求に、演出家の自分が刺激されるけれど、もう春木は戻らないという動かしようのない事実が心にのしかかる。

なのに、酔った勢いで好きだ…と体の関係を迫ってくる能天気な男(しかもユーレイ)に、生きているときと同じように非情な言葉を投げつける弓の性格がいい。
もう死んでしまったから…という情にほだされるでもなく、体が冷たいとか凍死したくないからと言い放つ姿に笑った。ムードも何もあったもんじゃない(笑)

生前の春木の行動を辿る過程で弓が自分の春木への思いを少しずつ、でも確実に見つめ直していく様子がすごく丁寧に描かれていて、胸がふわっと暖かくなる。
好きだとは決して言わないけれど、情景や言葉の端々に好きという気持ちがにじみ出ている。
そんな真摯な思いが伝わってくるから彼を思う気持ちを突き詰めて、もう戻らない彼を思って涙するシーンがあったら思わず泣いてしまっていたかもしれない。

ラストの決着のつけ方については、意見が分かれるかもしれないが自分としてはとてもよかったと思う。
帯のこの部分に気がついて手にしたんだけれど、読んでよかった〜と思わせる話だった。

ユーレイに関する小さな事件簿 (Hug NOVELS文庫)ユーレイに関する小さな事件簿 (Hug NOVELS文庫)
滝井 ルカ子

メディエイション 2008-12

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