« 小説 b-Boy 2006年 10月号 | トップページ | CD:HOT MENU »

くるぶしに秘密の鎖

渾身の力を込めて世に出したゲームが大ヒットし、第二弾の制作が決まった。
今度も一緒に仕事ができると思っていたが、どうやら自分はメンバーから外されると聞いて上司に直談判に行く"澤村"。
ところがそれは"水嶋"の提案だと聞かされ、はやる気持ちを抑えながら彼の意図をただしに行った。とりあえず自分が参加することを了承させたものの、水嶋の半分突き放したような態度が気になるのだった。
そして、初の企画会議の席で彼の態度の理由が明らかになった。
今回の企画にサウンドクリエイターとして参加する"烏堂"という男は以前の会社で水嶋と仕事に携わった仲間であり、彼の恋人でもあったのだ。
二人がどのような付き合いだったのか、気になって仕方がない澤村だったが忙しさに加えて意地が邪魔をしてなかなか水嶋に問いただせずにいた。
仕事にのめり込むと周りが見えなくなる水嶋の方も、澤村のそんな気持ちを知ってか知らずか自分から話してやることもなかった。そしてある日、烏堂と水嶋が話しているところを偶然見た澤村は堪えていた思いをぶつけてしまうのだった。

嫉妬しているなんて知られたくないと思いながら、気になる相手に体裁も構わずアタックしていく澤村は痛快だ。
相手がたとえ恋人の過去の男でも自分の感情に左右されることなく、どんな人間か見極めて評価できるのは彼の美点だろう。水嶋の過去の男という立場で登場する烏堂も思った以上にいい奴だった。
が、感情を表に出すのが苦手な水嶋にとっては、恋人が悩んでいるのを傍で見ていながら自分からは手を差し伸べようとしない烏堂より、無理矢理にでも自分の気持ちをさらけ出させてくれる澤村のような男が必要なのかもしれない。

続編の「くびすじに未来の約束」ではついに一緒に暮らしはじめた二人。
甘い日々が楽しめると思っていたが…現実は厳しい。仕事が忙しくてお互いに顔を合わせるのさえままならない様子が描かれている。
納得のいく仕事をと思うあまり、相手が新人でも容赦なくキツい言葉を発してしまう水嶋と周囲のスタッフとの温度差を見た澤村はなんとか手を貸してやりたいと思う。しかし、その気遣いが裏目に出てしまうと仕事上のきまずさはプライベートにまで影響しかねない。
それでも二人の関係は仕事面抜きには語れない。肝心なところをごまかさず、相手への思いやりを忘れずに互いに必要としあえる関係を築いていくために悩む澤村を見ていると水嶋は本当に愛されているなあと思う。
相手からの反応がなくても諦めない、思考を止めない。めげずになんとか反応を引き出そうとする澤村っていい男だよなあ〜と思う。二人の穏やかな甘さは読んでいてもとても心地いい。
また、烏堂と澤村と瀬木が一緒に食事しながら水嶋について語るシーンがあるのだが、水嶋に対する気持ちだけではなくそれぞれの仕事への想いが現われていてとてもいい感じだ。

番外編まんが「こめかみに甘い引き金」は前作「くちびるに銀の弾丸」と表題作との間を埋める物語だが、水嶋の視点で進行していくので、自分の感情に振り回されぐちゃぐちゃな思考回路の彼が拝める美味しい作品だ。
頁数も結構あって読みごたえ充分だ。

くるぶしに秘密の鎖
秀 香穂里著
徳間書店 (2006.8)

|

« 小説 b-Boy 2006年 10月号 | トップページ | CD:HOT MENU »

コメント

こんばんは~
なんだかもう、ものすごく好きです。
この話し。

澤村と水嶋の関係もそうだけど、この二人を取り巻く環境と言うのでしょうか、仕事仲間たちとのやり取りもすごく良い感じですもんね。

色っぽい水嶋に私の方がくらくらしちゃいました(笑

TBさせていただきます。
ではでは!!

投稿: Jura | 2006/09/22 17:57

>Juraさん
表紙の二人も素敵ですよね(^^)

仕事とプライベートを分けて考えるのではなく、全部ひっくるめて水嶋を受け止めようとする澤村は、前作とは比べ物にならないくらいいい男になったなあ〜と思います。
ふたりをとりまく周囲の雰囲気もホントにいいですよね〜
お互いに影響されあって成長していくというのが、すごくよく現われているなあと思いました。

投稿: 成田智 | 2006/09/23 14:03

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/117705/11964703

この記事へのトラックバック一覧です: くるぶしに秘密の鎖:

» くるぶしに秘密の鎖/秀香穂里(illust 祭河ななを) [kotonone::詞の音]
このところ小説を何冊か読んではいたけれど、感想を書きたいと思うまでに至るものに出会えなくてちょっと鬱々(笑そのなかで久々のクリーンヒットと自分的に思える作品にやっと出会えたのでこの感激を忘れないうち...... [続きを読む]

受信: 2006/09/22 17:57

« 小説 b-Boy 2006年 10月号 | トップページ | CD:HOT MENU »